ピロリ菌検査とは
胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因に関わっていることが知られるヘリコバクター・ピロリ菌。日本では、このピロリ菌への感染率が高く、従来は日本人の約8割が感染しているとも言われていました。現在は上下水道などが整備されるなど、衛生環境が向上し減少していますが、それでも60歳以上の約半数の人がピロリ菌に感染していると言われています。その多くは胃酸分泌がまだ少なく粘膜の免疫力が低い5歳以下の幼児期に、家族から感染することが多いとみられています。
ピロリ菌は、らせん状の細長い形をした細菌で、数本の鞭毛(ひげのようなもの)を持っています。酸素や乾燥は弱いのですが、胃の中に入るとアンモニアを産出し、胃酸を中和し、強い酸性の中でも生き延びる環境を作り出します。アンモニアが長く産出されることによって胃の粘膜が傷つきますし、ピロリ菌から胃を守ろうと免疫反応が起こることで炎症が発生し、慢性胃炎となってしまいます。慢性胃炎をそのままにしておくと、胃粘膜が萎縮して薄くなる「萎縮性胃炎」に進行します。更に萎縮が進行した胃には、腸粘膜に似た凹凸が出現します。これを「腸上皮下生」と呼び、この腸上皮下生粘膜を背景に胃がんが発生すると考えられています。この萎縮性胃炎は、これまで加齢によって起こるものと考えられてきましたが、現在ではヘリコバクター・ピロリ菌感染に伴うものだということがわかっています。
当院ではピロリ菌検査を行っています。下記のいずれかの場合、保険診療にて検査可能です。
- 内視鏡検査で胃炎が見つかった場合
- 内視鏡検査または胃X線検査で胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された場合
- 突発性血小板減少性紫斑病と診断された場合
- 上記の場合以外でも自費診療(全額自己負担)にて検査を受けていただくことが可能です。
ピロリ菌検査方法
ピロリ菌検査には内視鏡を用いる方法と、用いない方法があります。
内視鏡を用いる方法
- 培養法
- 採取した胃の粘膜をすりつぶし、ピロリ菌の発育しやすい環境において5~7日間培養してピロリ菌の有無を調べます。同時にそのピロリ菌の除菌に効果のある抗菌薬も調べることができます。
- 迅速ウレアーゼ試験
- ピロリ菌が持つ酵素・ウレアーゼが尿素からアンモニアを生じさせる機能を利用し、採取した胃の粘膜に対する、尿素を含んだ試薬の反応(色の変化)によって判定します。
- 鏡検法
- 採取した胃の粘膜の組織標本に、特殊な染色し、その後顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認します。
内視鏡を用いない方法
- 尿素呼気試験
- 診断薬を服用した状態と、服用しない状態で、それぞれ息を吐き、ピロリ菌の酵素・ウレアーゼによって産出された二酸化炭素の量を測定し、判定します。簡単で精度が高く主流となっている検査法です。
- 抗体検査(血液検査)
- ヒトの体内では、菌に感染すると抗体をつくります。ピロリ菌でも同様ですので、血液中や尿の抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定し、その値の高さで判定します。
- 糞便中抗原測定
- 糞便中にピロリ菌の抗原(ピロリ菌の出す毒素や菌の成分)の有無を調べ、胃腸内にピロリ菌がいるかどうか判定します。
ピロリ菌除菌治療方法
ピロリ菌の存在が認められた場合、ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんの原因ともなりますので、除菌することを強くお勧めします。当院では保険診療で、ピロリ菌の除菌をすることができます。
ピロリ菌の除菌では、胃酸分泌を抑える薬と、ピロリ菌を殺す抗生物質を用います。胃酸の分泌を抑えるのは、ランソプラゾールやオメプラゾールといったプロトンポンプ阻害薬、そしてピロリ菌を除菌するのが「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」のふたつの抗生物質です。
これらを1日2回、7日間連続して服用することで、約70~90%の方が除菌に成功します。不成功となった場合は二次除菌を行います。この場合の抗生物質は「アモキシシリン」と「メトロニダゾール」が使用されます。それでも除菌しきれなかった場合は、三次除菌として、「アモキシシリン」と「レボフロキサシン」を使います。ただし二次除菌までが保険適用ですが、三次除菌以降は保険適用外となります。
ピロリ菌除菌後も、胃がんのリスクがなくなるわけではありません。ですから、ピロリ菌が感染していた時期が長いと、萎縮性胃炎に腸上皮下生が発生し、元の正常な胃粘膜に戻らなくなってしまうからです。ですので、ピロリ菌除菌後であっても、定期的に内視鏡検査をすることをお勧めします。